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記事題目

「曹洞宗海外布敎會」

作者

雑誌名

『明敎新誌』

号数等

年月日

1900年4月26日

本文

同宗の重立たる僧侶の發起に係る同會は開祖の敎訓に随ひ異域の人民に至るまで周ねく佛敎の法雨に浴せしめんとの目的に出でしものゝ由にて既に日本全國各地に委員部を設置し會員を募集しつゝありしが今回秋田県委員部長には北村孝仙氏嘱任せられたれば氏は朝鮮布敎之趣旨を諸方へ送付せりと云ふ中に左の一節あり
抑彼は東洋平和の要邦而して唇亡びて歯寒きは智者を待たずして明なり於是乎餘輩慨然として言ふ是志士仁人奮然蹴起す可きの秋なり矣嗚呼氣息奄々たる半島の危運を挽回するは根本的改革に非ずんば不可なり之をなす如何政客を待たす兵力を要せず唯我洞門禮客の活手を必とする而已即彼を済ふの良剤は道徳を植るに在り道徳を植るは宗敎を興すに在り起てよ洞宗の龍象那伽大定は独善自養のものに非す空拳を擧て八道を警醒するも活參昧なり進め我門の俊傑勇往直前狂瀾を既倒に回はす豈第國に盡すの忠隣を憐むの義のみならんや實に朝鮮布敎則佛敎挽回なり況や彼の我に於るや千武不朽の大恩たる布敎伝來の徳あり苟も荷負ある而も同敎國の否運は佛祖尚ほ哀愍し賜はんその児孫たるもの爰そ冷然雲煙過眼も附するを得んや人或は言はん我は業に既に彼を敎ゆと洵に爾り豈夫れ然らんや彼日真二宗の如きは伝敎の範囲狭少にして進て彼を化育するの意氣なきは餘輩の親しく目撃する所なり而して土着の宗敎は萎靡振はず固より以て風敎を維持するに足らず飜て外敎伝導を看よその熱誠に驚く可し彼等の献身的なる往々駅路の露と消ゆるも毫も不屈不撓の精神を変せず其結果半島に磅礴せる潜勢力は吾人の心胆を寒からしむる者あり噫誰か有縁の同敎國を箥弄に委するに忍びんや彼を済ひ彼を化するは吾人の義務なり否寧ろ吾人の責任なり嗟大禅機を錬りし金玉均は既に斃れ寂寥人なき韓門は開放せり今や京仁鉄道は我手に成りて京釜鉄道も我手に成らんとす好機失ふ可からず蹶起せよ有爲の人仁整々の陣堂々の旗敎權を我掌に握るは豈快ならずや奮起せよ天下の禅客家伝駆虎の神杖を振て韓山の風雲を叱咤し八道の草木を風靡し死蛇を拈め常山の長蛇と化するも亦壮ならずや厳原岸頭近く望めば煙○模糊の中歴々指点す可き長蛇の國吾人の平等大悲を運ばゞ懇鳴啾々の苦海を脱して歓声嬉々の樂土に出るを得ん是れ餘輩が泣血以て曹渓同流の士に檄し茲に此會を興して布敎に従事せんと欲する所以なり天下の同士來れ速に來れ鶏林の野は一鶴の飛來を待つこと久矣

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