top of page

1-13

福を進捗するに在りと雖も之を達するの方法に至りて各
々意見を異にするに因るのみ而て意見を異にすれば何故
に互に黨派を結で相敵視するに至るやの理由に至ては蓋
し人各々唯我を以て最も尊しと爲す故に若し我意見の行
はれざることあるときは政黨派の勢を藉りて以て之を實行
せんとするより起るに外ならさるべし世の黨派の起元を
論する者或は之を以て專ら政治の方向を異にするに歸す
る者ありと雖も之れ唯表面の一部を解釋したるのみ深く
黨派の根元を穿ちたる者といふへからざるが如し何とな
れば古今數多の黨派中には敢て國家の利害を顧みす偏に
自説を實行せんと欲する者少からす或は又政治の方向に
就寸毫も意見を異にする所非ずと雖も互に一致協同す
ること能はざる者あれはなり故に吾輩は政黨の起る所以を
以て一に唯我獨尊の心に歸せざるを得さるなり
吾人は常に衆人の尊敬を受て一個帝王たらんと欲して息
まざる者なり吾人皆人の贊成を得て喜び人の不同意に遇
ふて哀み人の喝采を得て樂み人の讒謗を受て怒る蓋し其
喜怒哀樂の情を發する所以の者は己を賛成する者を服從
者と做し己れを讒謗する者を謀叛者と做し以て自然に賞
罰の機を其間に行ふ者にて帝王たらんと欲するの心は寸
時も之を忘るゝこと能わざるなり彼の婦人が美服を著け紅
粉を裝ひ一顰一笑の間に世人の喝采を購わんと互に相競
ふが如き或は男子が演壇に登て大喝一聲今古の英雄を睥
睨して滔々の辯を振ふが如き一は其屈賤むべく一は雄壯
bottom of page