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愛す可きが如くなれ共其實ハ兩者共に世人の敬愛を得て

一個の帝王となり一個の女王とならんと欲するに過ぎざ

るなり抑も政黨の目的とする所ハ己れが所見を以て法律

制度を作爲し以て國民の幸福安寧自由を保護し永く之を

後世に傳へて其尊敬を受けんと欲する者に非ずや是れ即

ち人々帝王となり女王とならんと欲する心の自然に發生

増長して玆に至れる者に非ずして何そや而て帝王となり

女王とならんと欲するの心ハ即ち唯我獨尊の心に外なら

ず故に曰ふ政黨の起る所以ハ唯我獨尊の心にありと

此の如く政黨の起元ハ本私心に在るが故に其國家の利害

を顧み人民の休戚を慮るが如きハ抑亦末なりと謂ふべし

而して未なる者ハ必ず其本に復するの勢を有するを以て

政黨の如きも動もすれば其本來の私心に還り易すく其末

節の公利公益とは常に相遠ざかるの傾向ある者なり且や

政黨の性質たる一國の安寧秩序を紊亂し在來の習慣法度

を破壞する者にて國の爲に害を遺すことあるも利を與すこと

は頗る稀なりとそ此と云ひ彼と云ひ一國中に政黨の興起

するあるハ甚祝すへきことに非ざるのみならす國家の爲に

は政黨の絶て無からんこと最も願はしきことなり然りと雖も此

願はしからざる政黨にして最も願はしき時節亦尠らす加

之文華の益々發達して自由同等主義の廣く世に布くに及

てハ一國の政治悉く政黨の手に歸し萬般の機務其掌中よ

り出るに至るハ實に必然の勢なりと知るべし今や吾邦に

於て政黨發生の萌あるハ文明自然の勢に助けられたる者

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