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近時吾國に於て產業の必要なることを覺りたるものにや頻

りに會社の設立あり其創立の多き今日より甚しきはなし

之を聞く明治二拾年內に創立せる會社全數ハ三百有餘に

して其費金も實に一億餘萬圓の多額に達せりと是れ誠に

一見產業上の美觀なるが如し然りと雖も沈思熟考するに

此の如きハ果して吾國に於て一年內に設立せらるべき相

當の數なるべきか斯く一時に會社の創立あるハ果して產

業の進步を徴するに足るべきか余輩頗る疑なき能はず顧

みて其商業上に影響を及ぼすことなきか余輩頗る憂なき能

はず好し此の如き疑憂なしとするも是等諸會社は果して

吾國產業進步の一助ともなるべきやの問題に至りてハ余

輩は實に積極の答を爲すに躊躇する者なり今密に之を撿

するに以上の諸會社中真誠の業務を執り產業上に有益な

るもの固より一にして足らずと雖も其過半の內情如何を

探り來るに基礎不定にして朝に起て夕に倒るゝ者のみに

して其外觀ハ或ハ農業或ハ漁業或ハ商工業等の名ハあれ

ど其內幕は株金未だ一回だも拂ひ込まざるに已に株式の

賣買盛に行はれ會社の事業ハ恰も株式賣買の如く賭博

の如く絶て其業務の實を示さゝるが如し此の如きもの皆

一時遽然に起り同時に始まり同業を營み社會進步の一點

には恬として顧みざる者あるに至ては余輩豈に長歎せざ

るを得んや鳴呼日本經濟社會も亦亂れたりと謂ふべしこ

れ豈に吾國產業の進步を徴するに足る者ならんや

諸會社の內幕夫れ此の如し世人が能く以上諸會社を以て

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