植民地朝鮮の日本人宗教者
記事題目
「台湾竝朝鮮布敎略則」
作者
雑誌名
『日宗新報』
号数等
596
年月日
1896年5月8日
本文
甲第壱號 各府県本宗寺院中
明治廿七八年役の結果台湾朝鮮布敎の布敎に逼り今般評議員會の決議を經て該地布敎略則を製定し直に施行候條各寺住職は檀信總代等を奨励し本則第七條の布敎費を喜捨せしめ毎期七月限り遅滞なく所管録司へ納付すへし此旨相達候事
明治二十九年四月二十八日
日蓮宗管長大僧正小林日董
台湾竝朝鮮布敎略則
第一條 本則は台湾竝朝鮮布敎を目的とす
但し台湾は本邦の新領地なるを以て布敎の順序は台湾より朝鮮に及すものとす
第二條 台湾朝鮮布敎事務は凡て本院に於て之を扱ふ
第參條 台湾朝鮮の布敎方法は凡て左の事項より初む
一台湾に於て一の布敎根拠地を定め時々演説説敎を爲す事
一該地の情況を視察して布敎区域拡張の準備を爲す事
一布敎手段として台湾土人の子弟を敎育する事
第四條 布敎師は檀林卒業以上にして身體壮健品行方正の者を選任す
第五條 布敎の年度は五年を一期とし布敎師の任期亦五年を一期とす
第六條 布敎費を揮て台湾朝鮮布敎外護員其他有志家の喜捨金を以て之に充つ
第七條 本則を實行する爲め全國宗内一般寺院檀信徒總代より台湾朝鮮布敎費として五年に金九十銭宛の喜捨を請ふものとす
但し初年金五十銭第二年以下四年間金拾銭宛の割納期は毎年七月限りとす
第八條 宗内一般寺院檀信徒總代を本宗永遠台湾朝鮮布敎外護員とす
第九條 有志家にして外護員に相當する喜捨を爲す者は外護員たるを得
第十條 本院は台湾朝鮮布敎外護員の証を製して外護員各自へ之を付與す
第十一條 外護員其他有志家の喜捨金は地方録司をして之を取扱はしむ
第十二條 布敎費支出の細目は別に之を定む
第十參條 布敎費の収支は毎年度決算書を製し宗内一般へ之を報告す
附 則
一布敎員派遣の期は本則發布の日より五十日間以内とす
一初年度布敎費徴集の期は本年八月卅日限りとす 以上
丁第壱號 各府県本宗寺院中
今般甲第一號を以て台湾朝鮮布敎略則發布候に付ては各寺院檀信徒總代等より該布敎金納付の都度厳重に取扱該金全額を取纏め毎寺郡村寺號竝に各檀信徒總代の姓名を記載せし納金表相添へ毎期七月卅日限り遅延なく本院講社係へ宛送納可致此段相達候事
明治廿九年四月廿八日 日蓮宗管長大僧正小林日董
番外 各府県本宗寺院中
今般別紙の通台湾朝鮮布敎略則發布相成候に付ては附則第一項に基き至急布敎師派遣候に付き各部内に於て該志願者若くは本則第四條に該當の者有之候はゝ來る五月十五日限り履歴書相添へ撰擧可致尤も本院に於ては録司の被撰人中より更に撰抜の上任命に及ひ候條此段添達候事
明治廿九年四月廿八日 日蓮宗々務院