top of page

記事題目

「寺内總督暗殺の大陰謀と基督敎徒」

作者

雑誌名

『中外日報』

号数等

年月日

1912年2月22・23・26日

本文

寺内朝鮮總督暗殺の大陰謀は、昨年九月總督府の探知する所となり、爾來其筋にては極力犯罪嫌疑者の検擧に努め、既に検擧せられたる者百數十名の多きに達し其中にて現に取調結了して検事局に送られたる者約七十名に及び、基督敎徒其多數を占め居れり、
斯くて○○開元の時より一昨年の日韓併合に至るまで基督敎徒は全土に亘りて統監附に対して有らん限りの邪魔をなしたり、然れども當時統監附は之に対して無理にも之を抑圧するの實力無かりしことは心ある者の深く遺憾とする所なりし。
斯の如き有様なりしを以て若し此際日本佛敎者にして真面目に鮮人の敎化をなさんと欲し、此の機運に乗じて布敎の根本策を確立し以て誠心誠意布敎に従事し居たらんには今日に及んでは必ず相応の効果を見るべきものありたるならんも惜しい哉、各宗派共その布敎の根本策を確立するに至らず、只だ漫然布敎の發展を企だて、或ひは何等期するところなくして開敎に着手したるものゝみなりしかば、統監府の施政に副ふこと能はず、又た併合後と雖も各宗派共布敎上殆ど何等の見るべきものなきは當然のことゝ云はざる可らず、然るに之のみなれば只だ佛敎者の無能を表白したるに過ぎざれども、各宗派多數の僧侶中、朝鮮の寺院佛堂の財産宝物等に眼を着け、種々策略を廻らして之を自己の宗派に属せしむるか又は横領せんなどとの野心の下に種々活動したる者多かりしを以て鮮人の敎化出來ざりしは勿論其上官憲より大いに嫌悪さるゝに至り布敎上却つて大妨害をなすに立至りたるは佛敎の爲め甚だ惜しむべきことなりとす、現今朝鮮布敎の振はざる、また故ありと云ふべし
伊藤統監の一大失敗とは何ぞや、之れ以前より常に外國に対して非常に恐怖心を有せる伊藤統監が、外國人の要求に応じて、朝鮮第一等の鉱山を彼等に與へたることにして、こは朝鮮の事情に精通せる者にして之を知れる者の今に至るも猶ほ等しく大いに遺憾とせるところ也
▲外人大鉱山を得 ○○、平安両道の境に横はつて半島を殆ど横斷せる一大鉱脈は、實に朝鮮に於ける第一等の鉱脈にして、殷山、甲山等の大鉱山を有せるものなれば、日本の事業家は固より外國人等も悉く之に頗る多大の望みを嘱し、何とかして己れの有に歸せんものと種々苦心しつゝありたるが、外國人は統監府の施設未だ完備せざるに乗じ、宣敎師等と氣脈を通じて統監に向つて之を要求すること頗る熱心なるものありし、然るに伊藤統監は元來が外國に対しては案外腰弱き方なる上に、當時外國宣敎師の活動頗る目覺ましきものあり、敎徒また其數を增加し非常の勢力を有し居たりしかば、一層之を恐るゝこと甚だしく、爲めに遂に右の要求に応じて之を外國人に與へたり(中略)彼等外人は如上大鉱山の權利を得るや、直ちに宣敎師等と共に數千人の鮮人基敎徒を集めて各々採掘に従事せしめたるにより、數個の鉱山は何れも數百數千宛の基敎徒の大集團を自然に形造り、此處に一大城郭を設くるに至りたれば也
然るに外國人宣敎師は、其間に在りて益々傲然と構へ込み、基督敎の主義に依りて人間の自由を説き幸福を語り、暗々裡に鮮人基督敎を煽動しつゝありしかば、統監府も大いに驚き茲に充分威力と權力を以て彼等に圧迫を加へんと決したり、以來明石警務總長等は主として此の方面に力を注ぎ、機に触れ事に乗じて基督敎を圧迫すること甚だしく、併合後總督府の設けられたる後も、官憲は依然として其態度を改めず、頗る烈しく基敎徒に対して威圧を加へつつあるが故に、基敎徒の不平憤慨甚だしく、漸次に益々官憲に対する彼等の反感を增し來れり。

bottom of page