植民地朝鮮の日本人宗教者
記事題目
「朝鮮内寺院及説敎所創設竝管理規程」
作者
雑誌名
『敎海一瀾』
号数等
478
年月日
1910年11月15日
本文
日韓併合條約發表相成候ニ付テハ今後益彼此親睦ノ度ヲ加ヘ内地人ノ彼地ニ移住スルモノモ日ニ逐フテ多カルヘク且朝鮮人ヲ指導啓發スヘキ敎家ノ任務ハ愈重大ト相成候就テハ派内子弟ニシテ彼地永住ノ目的ヲ以テ寺院説敎所等ヲ創設セムトスルモノニ対シテハ本山ヨリ特別ノ保護ヲ與ヘ且効績アルモノニハ相當ノ賞與可有之筈ニ候得バ昨年十一月發布甲達第五十二號ノ章程ヲ熟読シ此際奮励以テ半島開敎ノ功ヲ収メ敎家ノ責務ヲ完フセラレ度此段告示候也
追テ朝鮮ノ事情等不明ノ点ハ當統監部宛質疑相成度候
明治四十參年十月 朝鮮開敎總監部
甲達第五十二號(明治四十二年十一月)
朝鮮内寺院及説敎所創設竝管理規程
第一章 創設
第一條 朝鮮内ニ於テ寺院創設ヲ出願セントスル者ハ左ノ條項ヲ具備スルコトヲ要ス
一、本堂庫裡竝敷地ヲ所有スルモノ
二、檀徒名簿登録者參百人以上ヲ有スルモノ
參、寺有基本財産トシテ動産千圓以上又ハ本邦若クハ朝鮮ニ於テ見積価格之ニ相當スル不動産ヲ所有シ永續維持ノ見込確立セシモノ
四、佛敎中學卒業若クハ之ト同等以上ノ學歴ヲ有シ年齢二十五歳以上四十五歳以下ノ敎師ニシテ當該統監部監督ノ下ニ一ヶ年以上日韓人布敎ニ従事シタル者
第二條 朝鮮内ニ於テ説敎所創設ヲ出願セントスル者ハ左ノ條項ヲ具備スルコトヲ要ス
一、家屋竝敷地ヲ所有シ又ハ借受ルモノ
二、信徒名簿登録者百人以上ヲ有スルモノ
參、永續維持ノ見込確實ナルモノ
四、佛敎中學卒業若クハ之ト同等以上ノ學歴ヲ有シ年齢二十五歳以上四十五歳以下ノ敎師ニシテ當該統監部監督ノ下ニ六ヶ月以上日韓人布敎ニ従事シタル者
第參條 寺院、説敎所ノ創設又ハ在來ノ本山出張所説敎所ヲ寺院名義ニ変更セントスル者ハ願記ニ左ノ條項ヲ具備シ當該統監部ヲ經由シ本山ニ差出スヘシ
一、設立ノ目的、布敎方針、場所竝ニ着手ノ期限
二、創設地付近寺院寺院説敎所ノ距離及分布圖、境内敷地坪數平面圖、本堂庫裡附属建物平面圖
參、出願地ノ居留邦人戸口數、職業別本籍府県別及韓人戸數表
四、檀信徒名簿、各自記名調印
五、出願者ノ履歴書及戸籍謄本
六、財産目録
七、維持方法
八、一ヶ年間収支豫算調書
九、設立費豫算及其支出方法
第四條 従來ノ本山出張所ヲ寺院名義ニ変更スル際ハ其建築物ハ寺有トシ敷地ハ本山有トス
第五條 前條ノ場合ハ其所属動産不動産法宝物什器目録ヲ提出シ當該統監部ノ指揮ヲ受クヘシ
第六條 京城、龍山、仁川、釜山、大邱、元山、平壌ヲ本山直轄区域トシ當分個人ノ經営ヲ認許セス
第二章 管理
第七條 本山ハ創設出願者ノ資格ヲ調査シ其寺院住職又ハ説敎所擔當者ニ之ヲ命シ開敎使ニ任ス
第八條 創設寺院ハ總テ永代餘間ヲ特許セラル
第九條 寺院竝説敎所ニハ所属檀信徒中ヨリ參名以上ノ總代ヲ公選シ當該統監部ヲ經テ本山ニ差出スヘシ
第十條 寺院竝説敎所ニ左ノ帳簿ヲ備ヘ置キ各其事項ヲ詳記シ住職又ハ擔當者竝ニ檀信徒總代聯署捺印スヘシ
一、明細帳、創設手續、沿革、住職又ハ擔當者及檀信徒總代任免竝法宝物什器動不動産等
一、布敎日誌、布敎種類、開筵期日、參詣者數、其他特ニ記入スヘキ事項
一、會計台帳、毎月ノ収支
第十一條 住職竝擔當者ハ毎年半期毎ニ敎況報告、檀信徒ノ增減竝會計報告ヲ作製シ當該監督部ヲ經テ本山ニ差出スヘシ
第十二條 當該統監部ハ管内各寺院及説敎所台帳ヲ備ヘ所有財産其他重要ノ事項ヲ登録スヘシ
第十參條 寺院説敎所ニシテ移転修繕等ノ場合、他ノ地所等ヲ買受又ハ借受ントスル場合若クハ其所有地等ヲ他ニ貸與又ハ売却セントスル場合ハ必ス豫メ當該統監部ヲ經テ本山ノ認可ヲ受ケ右當該官憲ノ許可ヲ得タル上ハ指令本紙契約証本紙若クハ登記謄本相添ヘ速ニ當該統監部ヲ經テ本山ニ届出ツヘシ
第十四條 寺院創設後五ヶ年以内ニ基礎確立シ完成セルモノハ其成績ヲ審査シ相當ノ賞與ヲナス