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記事題目

「財團法人設立の經過―朝鮮佛敎團設立披露會に於て―」

作者

朝鮮佛敎團福團長 前田 昇

雑誌名

『朝鮮佛敎』

号数等

15

年月日

1925年7月

本文

【一】唯今設立者たる小林君の御挨拶もございました通り、舊佛敎大會が五年前この京城で生まれまして以來、今日まで御出席の皆様方の多大の御指導と御援助の下に、着々として發達を遂げ、殊に最近一年の間に、東京方面の有力な方々の非常なる御賛助を得まして、昨年來俄かに會の内容が變つて參りました。と同時に、この機會に小林君の御奮發に依りまして、法人の設立を見ることになつたのであります。恰度昨年委員の一部が上京を致しまして、其の當時専ら東京に於ける澁澤子爵の非常な御聲援によりまして、其の他徳川公爵或は清浦子爵といふやうな名士の方々が少からず御援助下さいまして、東京實業團方面に對して、この仕事の爲に多大の御出勤を得るやうな運びになりました。これに付きましては、恰度本日折よく此處に御出席下さいました野中鮮銀總裁の御奔走も非常な力がありまして、是等が恰度小林氏の御奮發と同時に、本團の基礎となりまして、遂に法人の設立を見るやうなことになつたのでございます。次に現在に於ける状況を、この機會に單簡に申上げて、皆様方の御了解を得、將來本團の爲めに、益々御援助を給はらんことを願ひたいと存じます。
【二】唯今申上げましたやうに、多額な御出金を得ますると同時に、本團の爲に各方面の名士方を顧問に推戴致し、殊に各宗の管長方を總て敎務顧問に御願ひいたし、又澁澤、高楠兩博士も顧問として、將來事業の上に御指導を下さることになりました。當地に於きましても、夫々顧問、其他として御指導を受けて居りますことは、將來本團の仕事を進めます上に、多大の効果があることゝ信じて居ります。尚ほ御參考までに申上げて置きますが、日本銀行、參井物産、參菱鑛業、滿鐵、第一銀行、横濱正金、日本郵船、安田保全、日本麥酒、京城電氣……これは大橋新太郎氏が同社長として、……大倉鑛業、東拓それに澁澤さんが個人として、其の他日本勸業銀行、斯ういふ方面から全額四萬參千圓を本會の爲めに御出勤を得たのであります。又小林氏の金品併せて十萬圓の資金、これを以て、本團の財團法人の設立を見ることを得たのであります。併しながら是等の金品は基本金としてででなく、……無論出來ます限りは基本金として保存を致しますが、大體はこの金額を年々に割振りまして、今後の事業費に當てゝ、各方面の事業に携はつて行くといふ計畫を樹てゝ居ります。
【參】先づ大正十四年度の事業に就いて申しますと、第一各種の講演、それから自分の所の會館で毎月行つて居ります佛敎講演、其の他名士を聘して臨時の講演をいたします。それから佛敎講座を開催して居ります。それから敎化方面としましては、現在京都の清水に居られます、元の法相宗管長大西良慶師が、本團の常任顧問となつて居ります。この大西良賢師が、大體一箇年に四五囘は來られまして、其の間鮮内各地を巡鍚を願ふことになつて居ります。それから、將來布敎師となるべき學生の養成、これだけは後に單簡に申上げますが、朝鮮の人から適當なる布敎師を作るといふ目的で、學生を選抜しまして、内地の宗敎學校に派遣致し布敎師として必要なる學習を遂げさす、この學生の養成を一つの事業として居ります。
この布敎師の養成に付きましては、色々と愼重に研究を致しました上に、先づ内地の各本山と聯繋を執りまして、各本山、各宗、各派で立てゝ居ります處の、完全なる宗敎學校に入れるとふことに致しまして、一つは内地の宗敎學校の専門部に入れるのが一種類、それから、學校に入れずして、内地の寺院に於て訓育的にやつて行くといふのが一種類、今一種類は、前の専門部に入れますところの學生中から、特に技能抜群の者がりました時に、大學豫科をへて、大學に入學さす、先づこの參種類の學生を養成することに規定をして居ります。これには、内地の各本山が多大の共鳴をして呉れられまして、この學生の養成費の大部分といふものは、皆各本山が負擔をして下さるので。中々本團から内地に五人、十人の學生を送ることは容易でありませぬ。少くも一人に五六百圓の費用は掛るので、唯今はこれを一箇年十人といふ標準を立てまして、毎年々々此方で人物を銓衡しまして、東京竝に京都方面に送出することに交渉を遂げ、既に本年は五名だけ、目下東京へ送つて居ります。これは東京の駒澤大學と宗敎大學、立正大學とこの參校に五名を収容されて居ります。是等には付きましては、東京にございます處の佛敎各宗聯合會の非常なる御世話を受けまして、現に芝增上寺の如きはこの五名の學生が東京に到着の卽夜から學校に入學まで一週間程寺内に宿泊させて貰ひまして、其の上各人に單衣物を一枚宛作つて貰ふといふやうな、非常な好意を寄せて居られるのであります。是等の學生は、専門部でありますと、大概參年を終りまして、更に卒業後一箇年、内地の各寺院の實況を見學させて、四年經つて此方へ歸つて來る、斯ういふ計劃になつて居ります。
【四】是等の學生に付きましても、唯今申上げますやうに、内地の各本山が特別の世話をしてくれて居りますが現在の文部大臣岡田閣下竝に宗敎局長の下村氏が個人的にお世話下さいまして、殆んど學校方面のことも、宗敎局長の色々のお指圖なり、又お世話を頂きまして、頗る好都合に行つて居ります。
 尚ほ是等の學生は本年は東京だけでありますが、是等の監督なり、或は保護指導については、幸ひに東京に支部を置きまして、其の支部主任として適當な人を得まして、是等學生の一切の世話をいたし、保護監督を加へて參りますから、先づ間違ひはなからうと思ひますが、自然將來京都にも斯ういふ風に支部を置くことになるだろうと思ひますが、東京、京都等各方面とも總ての感情が、如何にも自分のことのやうに熱心にお世話を下され、將來の事業についても種々御配慮下さる事は、私共の感激に堪へない次第であります。是等の方々に對しましても、今後餘程我々の責任の重きを感ずる譯でありまして、今後一層の努力をしなければならぬと考へて居る譯であります。
 【五】尚ほ本年の事業と致しまして、これから朝鮮内樞要の地に支部を設ける考へを有つて居ります。多分今年の秋には、朝鮮の十參道中の南鮮、湖南地方、西鮮地方等、先づ六ヶ處位は支部の置設を見得ることゝ信じて居ります。
 大體目下本團の状況は、唯今申上げますやうな譯でありまして、決して仕事をする上に充分といふ譯には參りませぬが、現在の豫算を以て、此の處參四年の間、出來る限りの努力を拂つて仕事をして、これを一般社會の方々から御覧を願ひました上、將來財團の基礎を今一歩固くする爲めには、更に基本金といふやうなものを拵へなければいくまいと思ひます。唯今の現状では、財團の基礎としては捎々薄弱でありますけれども、或る仕事をして行くといふことに、目下着々進んで參る譯であります。以上皆さん方に大體の状況の御了解を得まして、この上ながら本團の爲めに、一層の御指導と御援助を願ふ次第で御座います。(拍手)
―李團長事故不參に付前田副團長代理す―

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